こんにちは。
喜満満猫です。
いつも訪れていただき、本当にありがとうございます。
【城崎の花火⑨】から続きます。
己書の師範になる修行
わたしたち3人は、己書の師範試験を受けることを決めました。
師範の先生は、
『師範を目指すのであれば、みんなと同じようにではなく、厳しくそれなりにいきますよ。』
とおっしゃって、表情を引き締めました。
お題も、今までは好きなものを書いてきました。
ですがこれからは、師範になるべき技術力を持つようにと、段階を踏んでいきます。
絵の具を使ったり、薄墨で水墨画のような絵を描いたりしました。
己書のキャラクターは6体のお地蔵さまですので、何パターンかのお地蔵さまを描いたりしました。
笑顔あふれるお顔、口のとんがったお顔、への字口のお顔など、表情あふれるお姿は、眉毛の角度ひとつで表現できます。
龍や、観音さま。
食べ物では、お寿司や、ラーメン。
般若心経。
魚へんの漢字シリーズ。
七福神の神さまたち。
字と絵を組み合わせた、素晴らしい作品にどんどん挑戦できました。
出来上がった作品は、お題が同じでも人それぞれ個性があって、とても素敵でした。
本当に楽しく、充実した幸座が続きました。
手術しないでこのまま……
このころになっても、まだ手術を受ける決心がついていませんでした。
しかし次回の診察までには、決めなきゃいけない。
でも、中学3年生で受験生の次男のことを考えると、どうしても踏み切れません。
入院して手術になれば、最低1か月は帰ることができず、その後数ヶ月は、思うように身体が動かなくなるのです。
今のまま、気をつけて暮らせばなんとかなるんじゃないかと、手術しない選択肢のほうを考えてばかりいました。
どんどん苦しく描けなくなっていった
己書の幸座は、基本的に90分の授業になります。
1作品、1幸座で仕上げることができますし、ハガキのサイズのお題でしたら3〜4枚仕上げることができます。
ですが、そのころのわたしに、異変が起こってきました。
首を下げて、1時間半も描くことが本当につらくなってきたのです。
どう姿勢を良くしても、描くためには前かがみにならなくてはなりません。
ただでさえ、手に力が入らず、筆ペンを持つのも集中して、がんばって動かさなくてはならない。
苦しくなって、目を閉じて上を向いていることが多くなりました。
それを見た師範は、
『喜満満猫さん、どうしたの〜?』
と不思議顔。
『神さまを描かせていただくので、精神統一してます(笑)』
とごまかしたりしていました。
『集中が続かない〜、あかん、年やろか(笑)』
とか冗談を言ったりして、周りを笑わせたりしていました。
ぶち子はさすが親友で、小さな声で『大丈夫?』と気遣ってくれて、本当に涙が出そうになりました。
わたしは、いつまで、己書を描いていられるんだろう……。
このまま、ろうそくの灯火が消えていくように、少しずつ身体が動かなくなるのかもしれない。
不安ばかりがこころを埋めつくしていくのでした。
【城崎の花火《11》】に続きます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。