こんにちは。
喜満満猫です。
いつも訪れていただき、本当にありがとうございます。
【城崎の花火《51》】から続きます。
出逢いと別れ
病院というところは、とても思いが交錯する場所でもあります。
出逢いと別れ。
本来なら、いてはいけない場所です。
何かしらの体の不調のために、
家を離れて一時的に暮らす場所。
退院が決まったら、
『おめでとう!』というべき場所。
もしかすると、人生の最後になるかもしれない場所。
ご縁の不思議
ここに、同じ時期に、同じ病棟で、
ご一緒させていただいた方々とのご縁は、
何の意味があったのでしょうか。
少しお話しさせていただいただけで、
話が弾み、お互いの事情にうなずき、
親近感を持ち、仲良くなれた方が
何人もみえました。
退院という旅立ち
コンコンと、病室のドアにノックの音。
『喜満満猫さん、わたし、今日退院します。』
『うわぁ、よかったですね!
おめでとうございます!』
自分のことのようにうれしくなって、
2人とも笑顔が弾けました。
リハビリで描いてあった己書の作品を、
『これ、…よかったらもらってください。』
と、おずおずと差し出すと、
手に取って、驚いて。
声もなく、涙があふれて。
『……ありがとう。絶対忘れないです。
お互い、がんばりましょうね!』
そう言って、去っていかれました。
さみしくもあり、とてもうれしい朝でした。
はなむけの己書
こうして、退院していく方への、
はなむけの言葉として、己書は大切な役割を担ってくれました。
わたしは、正直、このために、
己書とのご縁がつながったのかもしれないとまで、思えました。
ご恩返しの座右の銘
ナースステーションにいつもみえて、
事務的な手続きや、面会案内などしてくださる方とも、とても仲良くなりました。
わたしと同年代で、子どもの年も近く、
会うたびに楽しくお話ししたりしました。
とてもお世話になっているので、あるとき
『好きな言葉書きますよ?』と言うと、
おずおずと彼女の座右の銘を伝えてくれたのです。
彼女はとても控えめな方で、
わたしとはまったく正反対の雰囲気。
深く強い優しさを持っている方でした。
彼女からは、励まされ、力づけられ、
つらい時にずいぶんと助けてもらって。
だからこそ、精一杯の感謝の気持ちを込めて、
描き上げました。
彼女は、目に涙をいっぱい溜めて、
喜んでくれました。
ひとを想うこころのリレー
次の日、病室にみえた彼女。
何かの書類かな?と思ったら、
1本のシャープペンシルを差し出しました。
『これね、実は息子が東京大学を受験したときのシャーペンなの。』
よく見ると、シャープペンシルには【東京大学】の文字が刻印されています。
『うちの長男から、弟に。
弟は違う大学だけれど、
このシャーペン使って合格できて。
そうやって合格できた息子たちが、
喜満満猫さんならいいから、ぜひあげてって。
喜満満猫ちゃんの息子さん、
大学じゃなくて高校受験だけれど。
ぜひ、お守りに。
これを使ってくれるとうれしいな。』
『ええっ!そんな大切なものを?
わたしがいただいていいの?』
驚いて、顔を上げると、彼女はにっこりして、
『ぜひにって、息子たちも。
喜満満猫ちゃんの、描いてくれた作品。
息子たちに見せたら、ほんとうに感動してて。
すごいすごいって。
こんなものではいけないけれど、
みんな喜満満猫ちゃんの息子さんの
合格祈ってるから。』
彼女からシャープペンシルを受け取り、
お礼を繰り返しながら涙が止まりませんでした。
『思いやり』…こんなにもひとのこころを温かくしてくれる。
ひとを想うこころは、こうしてリレーして、
温かく伝わっていくのだと、
深く深く感じたのでした。
【城崎の花火《53》】に続きます。
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