喜満満猫の癒される暮らし

難病とともに、今できることに感謝してパワフルに生きる己書家【喜満満猫】のブログ

【城崎の花火《47》】己書が書ける喜び

こんにちは。

喜満満猫です。

いつも訪れていただき、本当にありがとうございます。

【城崎の花火《46》】から続きます。

 

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『己書ってご存知ですか?』

作業療法士の尚子先生に、聞いてみました。

『先生、己書ってご存知ですか?』

『ううん、知らないけど、…書道かな?』

『はい、書の流派のひとつ、といいますか。

少し変わっていて、癒やし文字で…。

絵のような、字のような…。』

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己書を言葉で説明しようとすると、
どうしてもこんな表現になってしまいます。

作品をひと目見てもらえば、
その風情はすぐわかってもらえるのですが…。

『へえ〜、そんなのあるんだ。』

先生は、興味深そうに首をかしげました。

 

己書とリハビリ

まだ己書は誕生して10年ほどですし、
師範も当時全国に6〜700人ほどしかいませんでした。

まだまだ周知されていない、新しい文化のひとつです。

わたしは、先生にお願いしました。

『先生、実はわたし、11月に己書の師範試験を受ける予定なんです。

リハビリのひとつとして、己書の練習をしてもいいですか?』

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先生は、ぱっと表情を明るくして、

『いいよ!大丈夫。え〜、どんなものなの?書いて書いて。』

わたしも、すごくうれしくなって、

『ほんとですか!?うれしい!書きます!』

2人とも笑顔が弾けました。

先生ははっと顔を引き締めて、

『だけど、無理はだめですよ?』

とにっこりされました。

 

こころを込めて

わたしは、お世話になっているお礼に、

先生に、お好きな言葉か、お名前をお書きしようと思いました。

先生に、おうかがいしたところ、

『好きな言葉…好きな言葉ねぇ。』

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しばらく上を向いて考えていらっしゃって、

『うーん……浮かばないから、

わたしの名前書いてくれる?

和尚さんの尚で、【尚子】なのよ。』

『わかりました!』

 

久しぶりの己書

わたしは、リハビリテーション室から、ひとり病室に戻りました。

そしてすぐに、入院したときに持ってきていた、

筆ペンと画仙紙ハガキを取り出しました。

ベッドにテーブルをセッティングして、画仙紙ハガキと向き合いました。

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久しぶりに握る筆ペン。

長いこと、ずっと離れていたような感覚でした。

インクをぎゅっと押して、筆先ににじんできたのを確認して。

そっと、書きはじめました。

 

己書を書ける喜び

先生のお名前、尚子という字を、

円相を書いたあと、その上に重ねて書いていきます。

右手の中指、薬指、小指の鈍い麻痺のせいか、

力は入らず、ぐらぐらしてしまう。

でも、一生懸命、こころを込めて。

時間がかかっても、ふらふらの字でも。

今、自分にできる、1番の文字を。

『尚子』と書き上げました。

涙がじんわり、出てきました。

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こんなにも…己書が書けることに喜びがあふれる。

こんなにも…うれしいなんて。

ずいぶんと手術前より、手は落ちてしまいましたが、それよりも何よりも。

己書を書ける喜びに、

じんわりと、ひたり続ける喜満満猫でした。

 

【城崎の花火《48》】に続きます。

 

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最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

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